注文住宅の断熱はUA値だけで決まらない|等級5に届かなかった実例と5社の仕様比較

私が55歳で築60年の実家を建て替えた記録から、「断熱性能をどう比べたか」の話をまとめる。

5社を訪問して各社の断熱仕様を聞き、住友不動産で建てた。完成後に計測した我が家のUA値は0.62で、断熱等性能等級5には0.02届かなかった。

数値が届かなかったこと自体より、なぜ届かなかったのかを知ったことのほうが、これから建てる人には役に立つと思う。同じ仕様で建てても、家の形によって数値は変わるからだ。

小屋裏の壁面と屋根面に施工された高性能グラスウール
小屋裏の壁面と屋根面に施工された断熱材

この記事の要点

  • UA値は家の形で変わる
  • 我が家は狭小地に高さで補った形のため、標準仕様で建てても等級5に届かなかった
  • 夏の暑さ対策には、UA値だけでなくηAC値(日射で入る熱)も重要
  • C値(気密性)の扱いは会社によって考え方が分かれる。両方の言い分を知っておくといい

我が家のUA値は0.62、住友不動産の標準は0.46

住友不動産のツーバイフォー工法の標準仕様は、UA値0.46とされている。

断熱等性能等級5(ZEH基準)が0.60、平成28年省エネ基準が0.87なので、標準のままで等級5を上回る数値だ。

ところが、設計段階で計算し、完成後に最終計測した我が家の値は0.62だった。

標準仕様より0.16不足し、等級5にも0.02足りない。

理由は家の形にある。

UA値は、家全体から逃げる熱を外皮の総面積で割った値だ。つまり部位ごとの性能を面積で加重平均している。

我が家は狭小地に建てた家で、小さな平面を高さで補った形をしている。

この影響で断熱性能の高い天井や床の比率が小さくなり、比較的性能の低い外壁の比率が大きくなる。

仕様は標準のままでも、形が変わると数値は変わる。

設計段階で等級5に届かせることもできた。トリプルガラスやダブル断熱(付加断熱)を入れれば数値は上がる。

ただ東京の住宅では過剰な設備で、予算も超える。UA値0.6前後を確保できていれば実用上は十分だと判断し、数値を追うことはしなかった。

住宅ローン控除を受けるための省エネ基準は満たしている。2年住んだ体感でも不満はない(詳しくは第21章に書いた)。

UA値以外に重要な数値がある

もうひとつ計測した数値がある。

ηAC値(イータ・エーシー値/冷房期平均日射熱取得率)だ。夏に日射が外皮からどれだけ室内に入るかを表す指標で、小さいほど夏に強い。

我が家は1.7だった。等級5の基準が2.8なので、基準の6割程度に抑えられている。

効いているのは3つの仕様だ。

  • 窓:YKKap APW330 の日射遮蔽型Low-Eペアガラス
  • 屋根:KMEW コロニアル遮熱グラッサ(遮熱塗装)
  • 外壁下地:ラミテクト プレミアムサーモ(遮熱透湿防水シート)
YKKap APW330 樹脂サッシの実物(当家の窓)
日射遮蔽型Low-Eペアガラスの窓

UA値が「温度差で逃げる熱」を表すのに対して、ηAC値は「日射で入る熱」を表す。

UA値が同じでも、夏の暑さの感じ方は変わる。東京のように夏の暑さが厳しい地域なら、こちらも重要な指標だ。

C値(気密)をどう扱うか——会社ごとに考え方が分かれる

5社のうち、気密(C値)に言及したのは住友不動産と桧家住宅の2社だけだった。そして、この2社の立場は正反対だった。

桧家住宅は、家全体を現場発泡の断熱材で覆うことで気密性を確保していると説明した。

全棟で気密測定を実施し、当時の実測平均は0.31とのことで、これを全面にアピールしてきた。数値をアピールする立場だ。

住友不動産は、初回の打ち合わせから「断熱性だけでなく気密性も大切」と説明し、気密性はC値によって計測することを示したうえで、C値の評価については独自の見解を示した。

C値は建物の隙間面積を表す数値だが、換気口の開口面積は測定の対象外になる。

気密測定は換気口をすべて塞いで行うため、実際に住んでいる状態の気密性を表していない——だから全棟計測して数値を公表することはしていない、という説明だった。

どちらの言い分にも理屈がある。数値を出す会社は比較しやすく、出さない会社は測定方法の限界を指摘している。

読者としては、C値を出す会社に対しては「どういう条件で測ったか」を、出さない会社に対しては「では何で気密性を担保しているか」を聞くのが現実的だと思う。

なお住友不動産の場合、標準仕様(ツーバイフォー工法・高性能グラスウール・オール樹脂サッシ)でも北海道基準を上回る気密性を実現しているとの説明で、より高い気密性を求める場合は「気密施工」がオプションになる(ウッドパネル工法・トリプルサッシ・内外ダブル断熱仕様など。実測例0.42)。

5社の断熱仕様を並べる

訪問した5社の提案書から、断熱に関わる仕様を並べる。記載がない項目は、提案書に書かれていなかったということだ。

断熱材

  • 住友不動産:高性能グラスウール「イゾベールスタンダード」(24K・熱伝導率0.035)
  • 桧家住宅:現場発泡断熱材「アクアフォーム」(14K・熱伝導率0.033)。現場で発泡させて吹き付け、家全体を覆う
  • 東栄住宅:高性能グラスウール「アクリアアルファ」(20K・熱伝導率0.034)
  • タマホーム:高性能グラスウール(14K・熱伝導率0.05)
  • 一建設:提案書に記載なし

  • 住友不動産/東栄住宅/タマホーム:YKKap APW330 オール樹脂サッシ+日射遮蔽型Low-Eペアガラス
  • 桧家住宅:断熱樹脂サッシ+遮熱Low-Eペアガラス(メーカーの表示なし)
  • 一建設:提案書に記載なし

玄関ドア

  • 住友不動産:YKKap イノベストD50(高断熱玄関ドア)
  • 東栄住宅:YKKap ヴェナートD30
  • 桧家住宅/タマホーム/一建設:提案書に記載なし

屋根

  • 住友不動産:KMEW コロニアル遮熱グラッサ(遮熱塗装)。勾配天井と小屋裏収納の部分は屋根断熱、それ以外の2階居室の上は天井断熱
  • 桧家住宅:スレート葺+遮熱タイプ通気スペーサー「アクエアーシルバー」+全面屋根断熱
  • 東栄住宅:クボタ松下電工外装 グリシェイドクアッド(遮熱機能なし)
  • タマホーム/一建設:提案書に記載なし

外壁下地

  • 住友不動産:ラミテクト プレミアムサーモ(遮熱透湿防水シート)
  • 桧家住宅:アクアシルバーウォールライト(透湿・防水・遮熱シート)
  • 東栄住宅/タマホーム/一建設:提案書に記載なし

基礎

  • 桧家住宅:基礎断熱
  • 他4社:床断熱

床断熱は床下に断熱材を敷き詰める方式で、床下換気口から外気が入る。

桧家住宅の説明では、基礎断熱は外気の影響を受けにくく、基礎と床の空間を蓄熱層として使えるという。

5社を比べて私が判断したこと

断熱性能と気密性能だけを見れば、桧家住宅が群を抜いていた。

現場発泡で家全体を覆う工法、全棟気密測定、全面屋根断熱、基礎断熱——どれも他社より踏み込んでいる。

ただ、それが価格にも表れていた。

住宅設備は住友不動産に比べると安価なものを採用しているわりに、見積もり総額は5社の中で最も高い。高い断熱性、気密性を確保するためだが、この部分で自分にはオーバースペックに感じた。

私が選んだのは住友不動産だった。断熱・気密では2番手だが、性能と価格のバランスで最適だと判断した。

等級5に届かない0.62という数値でも、東京で暮らすには十分だという判断も含めての結論だ。

断熱性能をどこまで求めるかは、地域と予算で変わる。北海道と東京では必要な水準が違うし、性能を1段上げるためのコストが暮らしの快適さにどれだけ跳ね返るかも、家によって違う。

この記事で並べた仕様は、各社の提案書に書かれていたものだ。裏を返せば、提案書をもらわなければ比べようがない。記載のある項目とない項目の差そのものが、各社の姿勢を映していた。複数社の資料をまとめて集める方法は別の記事に書いた。

2年住んで——数値と体感は合っていたか

光熱費は、旧家(築60年)と比べて電気が4割減、ガスが半減した。冷暖房費で見ると約21%減。

この水準は2年経った今も変わっていない。断熱性能はランニングコスト低減に明確に寄与している。

体感でも不満はなく、夏冬ともに快適に暮らしている。

ひとつだけ、設計を振り返って気づいたことがある。

先日調べたところ、YKKap APW330には「日射取得型」と「日射遮蔽型」があることが分かった。

「日射取得型」は主に南側の窓に使用して室内に日射を取り入れ、「日射遮蔽型」は主に西側の窓に使用して西陽を遮るのが一般的とのことだ。

我が家は全ての窓を日射遮蔽型で統一した。夏の日射を遮る性能は高く、ηAC値1.7という数値にも表れている。

一方で、冬に日射で室内を暖める効果は期待しにくい構成だ。

南面だけ日射取得型を採用すれば、冬の暖房補助を狙う設計も成立した。

実際の暖房効果には満足しているので後悔とまでは言わないが、窓は方位ごとにガラスの種類を変えられる、ということは知っておいてよかったと思う。

まとめ

  • UA値は家の形で変わる
  • 我が家は狭小地に高さで補った形のため、標準仕様で建ててもUA値0.62で等級5に0.02届かなかった
  • 夏の暑さ対策には、UA値だけでなくηAC値(日射で入る熱)も重要。我が家は1.7で基準の6割程度
  • C値(気密性)の扱いは会社ごとに分かれる。出す会社には測定条件を、出さない会社には何で気密を担保するかを聞く
  • 断熱性能をどこまで求めるかは地域と予算で決まる。東京ならUA値0.6前後でも実用上は足りた

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