第37章 住宅ローン

引き渡し日は5月24日。この日の午前中に住宅ローンの融資が実行され、午後に引き渡しが行われる。

金融機関からハウスメーカーへの大金の振り込みと、家の所有権の移転。建て替えプロジェクトの金銭面のクライマックスだ。

この章では、契約直後から引き渡し日までの約9ヶ月間にわたる、住宅ローン選定と手続きの全経過をまとめる。

三井住友信託銀行の住宅ローン利用ガイドと契約書類(一部伏せ処理)
三井住友信託銀行で借りた住宅ローンの契約書類と利用ガイド

契約時の事前審査・本審査

契約日と同じ2023年8月13日、住友不動産の提携先である三井住友信託銀行に事前審査を申し込み、8月20日ごろ通過。12月3日には本審査にも申し込み、1月3日に承認された。

いずれも住友不動産のフロー上必要な形式的手続きで、実際にどこで借りるかはこの段階ではまだ決めていない。中間金省略の前提条件を満たす意味もあり、早期に進めておいた。

モゲチェックで複数銀行を比較

本格的な銀行選定は、年が明けてからだった。

住宅ローンの比較には、モゲチェックというサービスを使った。複数の銀行の金利・条件を一括比較できるサイトで、ここでauじぶん銀行と住信SBIネット銀行が、変動金利0.2%前後という好条件を提示していた。

三井住友信託銀行の変動金利は約0.7%。当時としてはネット銀行に対して割高感があった。0.5%近い金利差は、15年返済でも数十万円規模の差になる。

1月11日、auじぶん銀行と住信SBIネット銀行の事前審査を同時申込。翌12日、両行とも承認。ここから、どこで本審査を通すかの検討が始まった。

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本審査の申込タイミングが、建築スケジュールに左右された

ネット銀行2行の本審査には、最終借入金額で申し込む必要がある。借入金額を確定させるには、建物本体だけでなく、外構工事まで含めた最終契約金額が必要だ。つまり、外構工事の仕様が決まって契約書が揃わないと、本審査に進めない

ところが、外構工事の仕様決定は4月初旬までずれ込んだ。引き渡しが5月24日と決まっているなか、4月14日に本審査を申し込んだのはギリギリのタイミングだった。

第29章で書いた建築許可申請の遅れが、すべてのスケジュールを後ろに押し下げた。一つの遅延が、プロジェクトの最終盤まで尾を引いた形だ。

5月7日、明暗が分かれる

4月14日に同時申込した2行は、5月7日に同日結果が出た。

auじぶん銀行:却下。

住信SBIネット銀行:承認。

auじぶん銀行からは、却下理由は告げられなかった。ネットの評判を調べると、同行は審査を外部機関に委託していて、機械的な審査で落とされることが多いという。

年齢、属性、その他何かの条件に機械的に引っかかったのだろう。55歳という年齢が効いた可能性もある。

この時点で選択肢は2つに絞られた。金利の安い住信SBIネット銀行か、割高だが住友不動産と連携している三井住友信託銀行か。

住信SBIに電話した結果、方針を切り替えた

住信SBIネット銀行に電話で問い合わせた。返ってきた対応は、こうだった。

「〇日までに必要書類が揃えば、その〇日後に実行します」

書類が揃わなかった場合は、機械的に実行日が後ろ倒しになる可能性が示唆された。ネット銀行は基本的にオンライン完結で、相談や個別対応という姿勢が薄い。

ここで危惧した。もし実行が遅れたら、引き渡しに間に合わない

引き渡し日5月24日の午前中に融資実行、午後に引き渡し。このスケジュールは動かせない。

住友不動産も引き渡し日を前提に工程を組んでいる。融資実行が1日でも遅れたら、引き渡し全体が連鎖的に遅延する。

一方、三井住友信託銀行は大手で、店舗に出向いての相談ができる。担当者も融通が利くタイプで、何より住友不動産との連携実績があり、引き渡し日に合わせた実行スケジュールが確実に組める。

金利差はネット銀行に大きく利があった。しかし、引き渡し日前の確実な実行と、何かあった時の相談窓口の存在。この2点を優先して、三井住友信託銀行に決めた。

5月8日、正式申込。そして5月24日、融資実行

5月8日に三井住友信託銀行に正式申込。そこから引き渡しまでの約2週間、担当者は最速で対応してくれた。住友不動産とも密に連携しながら、必要書類を揃え、最終的な融資実行の段取りを整えてくれた。

こういう相談が必要な融資案件は、やはり窓口のある大手は頼りになると実感した。

5月24日午前、融資実行。午後、引き渡し。予定通りの一日だった。

ローンの基本設計:15年返済、変動金利、60歳で一括返済

当家のローンの基本スペックは以下の通り。

  • 変動金利
  • 返済期間15年
  • 団信は一般団信
  • 頭金500万円
  • 完済予定年齢は70歳前半

ただし実際には、60歳時点で一括返済する前提で設計している。60歳時点でiDeCoの一時金受取が可能になるため、この段階でローンの残債を一括繰り上げ返済する計画だ。銀行側にもこの方針は伝えてある。

変動金利を選択した理由は、この返済計画にある。数十年借り続けるのであれば、資金に余裕がない場合は固定金利の方が安全だ。

しかし今回は短期で完済する計画。金利が最大まで上がっても返済可能な試算ができたため、割安な変動金利を選んだ。

55歳で住宅ローンを組む、ということ

一般に、住宅ローンは35年返済が標準設定だ。20代・30代で組んで、定年前後に完済する、というのが教科書的なモデル。

55歳で新規にローンを組む場合、年齢がいくつかの制約として現れる。

  • 完済時年齢の制限(多くの金融機関は80歳まで)
  • 審査における年齢の不利(今回のauじぶん銀行の却下もこれが効いた可能性)
  • 団信加入の審査

当家の場合は、狭小住宅で借入金額が比較的小さかったこと、頭金500万円を入れたこと、そして何より60歳時点でのiDeCo一時金による一括返済計画があったことで、返済期間15年・完済年齢70歳前半という形で収まった。60歳までの収入でローンを十分支払えることが見込めており、さらに60歳時点で一括返済する出口が明確。この2点が揃ったからこそ、銀行側も融資を決断できた。

なお、住友不動産は中間金不要のため、つなぎ融資は使わなかった。引き渡し日までに発生する費用(解体、仮住まい、引っ越し、外構契約金など)は、自己資金で対応した。

住宅ローン減税も適用

狭小住宅ゆえの注意点として、住宅ローン減税の適用条件を事前に確認していた。

当家は床面積が原則50㎡以下の狭小住宅。この規模の住宅で住宅ローン減税を受けるには、2024年時点で以下の条件を満たす必要がある。

  • 合計所得金額1,000万円以下
  • 省エネ基準適合住宅

住友不動産の注文住宅はZEH基準を標準で満たしているため、省エネ基準適合住宅の条件はクリア。引き渡し後、住友不動産に「住宅省エネルギー性能証明書」を発行してもらい、各種図面と併せてエビデンスとして、住宅ローン控除の申告を行った。

狭小住宅での住宅ローン減税は、この「省エネ基準適合住宅」の証明が肝になる。ハウスメーカー選びの段階で、この証明書を発行してもらえるかどうかを確認しておくのが、地味だが重要なポイントだ。

実際の還付額も書いておく。初年度は年間約13万円。以降は残債の減少に応じて少しずつ下がり、4年度分で約45万円の還付を見込んでいる。

3年半で完済するため、13年間フルで受けられる人に比べれば控除額は限定的だ。それでも、支払う利息の4〜5割は、この控除で賄える見込みになっている。

ひとつ、出口の設計で工夫している点がある。60歳到達時点ですぐ繰上げ返済するのではなく、その年の年末残高は残しておき、翌年1月に繰上げ返済する。年末時点で残債があれば、その年分の控除を受けられるからだ。完済のタイミングを1ヶ月ずらすだけで、控除1年分が変わる。

2年後の答え合わせ——変動金利は、実際に上がった

変動金利を選んで2年。金利は、実際に上がった。

借入時(2024年5月)、三井住友信託銀行の変動金利は約0.7%だった。それが2025年1月に約0.85%、2025年7月に約1.1%、そして2026年7月には約1.35%まで上がっている。2年で倍近い。

返済額そのものは、5年ルール・125%ルールの範囲内で据え置かれている。だが、金利の上昇は想定以上だった。

このまま金利が上がり続けた場合、繰上げ全額返済を予定している2028年1月時点でどうなるか。年2回、毎回上限まで上がるという最悪のケースを想定すると2.85%程度になる計算だ。ここまで上がる可能性は高くないが、そうなれば借入時に選ばなかった5年固定(当時1.8%)を超えることになる。

それでも、当家の判断は変わらない。返済額を固定したまま3年半で全額繰上げ返済するため、支払う利息の総額では固定金利を下回る見込みで、毎月の返済に苦しむこともない。短期完済の計画があるからこそ、変動で押し切れる。

もし今、10年以上のローンを組むなら

ただし、これは「短期で完済する」という出口があっての話だ。一般論として書いておきたい。

借入当時はまだゼロ金利が続いていて、変動金利の住宅ローンと住宅ローン控除を組み合わせるのは「お得な選択」と言われていた。だが金利のある今、住宅ローンそのものがリスクのある存在だと痛感している

これから10年以上借りる前提で住宅ローンを検討するなら、変動金利は要注意だ。私見だが、次のような検討をお勧めしたい。

  • 資金があるなら、現金一括購入
  • その資金がないなら、資金計画・返済計画を入念に組む
  • 資金に余裕がないときほど、固定金利を中心に検討し、繰上げ返済を計画に組み込む

借入にかかった諸費用

住宅ローンは、借りるだけで費用がかかる。三井住友信託銀行の手数料は、当時2タイプから選べた。

  • 融資手数料型:手数料が借入金額の約2%
  • 保証料型:手数料は約5万円+借入期間・金額に応じた保証料

当家は保証料型を選び、保証料として約20万円を一括で支払った。この型は、繰上げ返済をすると保証料の一部が返戻される。3年半で完済する計画の当家には、こちらが合っていた。

借入金額が大きいほど、融資手数料型(借入額の2%)は高くつく。短期完済で保証料の返戻が見込めるなら、保証料型が有利になりやすい。ここも、返済計画とセットで選ぶ部分だ。

振り返って

住宅ローンは数字の話のように見えて、実は判断とタイミングの話だった。金利差0.5%より、引き渡し日前の確実な実行を優先する。それが当家にとっての正解だった。

その後の金利上昇で、ネット銀行との金利差は今ではほとんどなくなっている。結果論ではあるが、三井住友信託銀行を選んだ判断は、金利面でも大きな損にはならなかった。

次は、引き渡し日の確定と、所有権移転登記の話に進む。


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