引っ越し準備

仮住まいの契約が済んだ時点で、本格的に引っ越し準備が始まった。

築60年の実家には、60年分の荷物がある。祖父母が暮らし、親が暮らし、自分が育ってきた家だ。タンスの奥からは昭和の切手が出てくるし、押入れからは祖母の着物が出てくる。

新しい家は、敷地の条件から今よりかなり狭くなる。ということは、今の荷物を全部は持っていけない。むしろ、この機会に思い切って減らすべきだった。

判断基準は「極力捨てる、処分する」。

引っ越し業者の選定

まず動かしたのは、引っ越し業者の選定だった。

今回の引っ越しは、普通の引っ越しとは条件が違う。仮住まい先には必要最小限のものだけ運び、残りの荷物は業者の保管サービスに預ける。そして半年後、新居が完成したら、仮住まい先の荷物と保管荷物を新居に運び込む。つまり「2段階輸送+半年間の保管」という特殊な形になる。

これに対応でき、かつ価格が妥当な業者を探す必要があった。

ネットで検索し、評価の高かった「アーク引越センター」に見積もりを依頼。あわせて、住友不動産からの紹介2社、日本テンポラリーハウスからの紹介1社の計4社から相見積もりを取った。

比較したのは「保管料+往復引っ越し代金」の合計額。最も安かったのがアークで、そのまま発注を決めた。

業者が決まると、引っ越し用のダンボールが大量に支給される。部屋の片隅に、空のダンボールが山のように積まれた。この日から、片付けと荷造りはダンボールと引っ越し日の双方からプレッシャーを受けながら進めることになる。

荷物の仕分け

引っ越し準備で最も神経を使ったのが、荷物の仕分けだった。

仮住まいに持ち込む荷物、トランクルーム等に預ける荷物、新たに購入して仮住まい先に納品する荷物、新居用に新規購入する荷物。この4系統に振り分ける必要がある。

仮住まいに持ち込む荷物(引っ越し業者が輸送):冬物の衣類、生活必需品、家電、食器(半分)、リビングチェア、最小限の本とブルーレイ、建築用の図面・資料一式。

仮住まいに持ち込む荷物(自分で徒歩搬入):ゴルフバッグ、キャスターバッグ、自転車。仮住まいは実家から徒歩圏内なので、運べるものは自分で運んだ。

トランクルーム等に預ける荷物:本、CD・ブルーレイ、書類、夏物衣類、食器(半分)。半年間使わないものは、まとめて保管。

新たに購入して仮住まい先に納品:マットレス(畳に敷いて寝た)、座卓と座椅子(デスク代わり、後に新居の小屋裏に設置)、ダイニングテーブル、TV台、レンジ・トースター台。仮住まい先には家具がないので、生活の最低限を揃える必要があった。

この段階で、新居用に新規購入する家具も見定めていく。実際に今持っている家具のサイズを測り、購入予定の家具のサイズを調べ、新居の図面と仮住まい先の図面を並べて睨む。どの家具をどちらに置くか、新居のどの部屋に置くか。図面と現物を往復しながら、仕分けを詰めていった(新居用の家具については後章であらためて書く)。

不用品の処分は、業者の組み合わせで回す

仕分けが進むにつれ、処分すべき不用品も明確になっていく。家庭ゴミに出すだけでは追いつかない量だ。品目によって処分方法が違うので、業者を使い分けた。結果として、かなりの数のサービスを利用することになった。

:ブックオフの宅配買取を利用。段ボールに詰めて着払いで送れる。売値は度外視。とにかく処分することが目的だった。送ったのは十箱以上になる。

ゴルフクラブ:ゴルフダイジェスト・オンラインの買取サービス。こちらも宅配で完結する。ブックオフと同じ要領。

鞄やブランド品:ブランディア。宅配買取の仕組みは近年広く普及していて、こうしたサービスを並行利用できるのが本当にありがたかった。

祖母の箪笥、骨董品、着物:「さくら堂」という骨董品買取業者に出張見積もりに来てもらった。結果、引き取れるものはない、とのこと。家族の歴史の詰まった品々だが、市場価値という観点では厳しい現実がある。これは後述する別ルートで処分することになった。

古い切手や古銭:「買取大吉」に持ち込んで、数千円になった。期待はしていなかったが、ゼロよりはいい。

雑誌、衣類:市の古紙・古布回収に出した。自治体サービスは無料で使えるので、対応品目はここで処理するのが効率がいい。

そのまま捨てられない書類:郵便局の書類廃棄サービスを利用。個人情報が載った書類を安全に処分できる。こういうサービスがあることを、今回はじめて知った。

粗大ごみ:自治体の粗大ごみ回収。

最後は不用品回収業者と解体業者

上記のルートを全部使っても、処分しきれない荷物は残る。

分類が面倒なもの、判断に迷うもの、量が多くて個別対応では間に合わないもの。これらは不用品回収業者「エコピット」に依頼して、引っ越し直後に丸一日で家をほぼ空にしてもらった。

ここまでやっても、残るものはある。開封済みの調味料のうち産廃扱いになるものや、金物、木製の家具など。これらは最後、解体業者のMUSUBIに「解体時にまとめて処分」を依頼する段取りになった。家ごと壊してしまうのなら、中身もそのまま処分してもらうのが合理的だ。

家一軒を空にするというのは、想像以上の作業だ。モノを減らすだけではなく、それぞれを「どのルートで処分するか」を判断し続ける必要がある。この判断の連続に、相当な時間とエネルギーを使った。

引っ越し日の延期

当初、引っ越しは12月3日を予定していた。

しかし、片付けと荷造りが間に合わなかった。量を甘く見ていた、というのが正直なところだ。一日あたりに処理できる箱数には限界がある。

引っ越し日を、12月17日に2週間延期することにした。仮住まい先は11月5日から契約開始していて家賃は発生しているので、入居タイミング自体はこちらの裁量で動かせる。調整が必要だったのは、アーク引越センターの作業日と、ライフライン各社の開通日だった。関係各所に頭を下げながら、段取りを組み直す。

本来であれば、12月初旬から予定されていた解体工事に合わせて、12月5日までには家を空けておく必要があった。引っ越し日の2週間延期は、この当初スケジュールからは大きく外れる決断になる。それでも延期できたのは、後の章で書く別の事象も背景にあった。

ここまでのプロジェクトは、ハウスメーカー選定、仕様決定、解体業者選定、仮住まい先選定と、すべてが順調に決まってきた。しかし、建て替えは一筋縄ではいかない。想定通りにいかないことが、このあと立て続けに起きる。