第32章 地縄確認会・着工会

建て替えプロジェクトは、ついに「建てるフェーズ」に入る。

1月下旬、連続する工程を1週間刻みで消化していくことになった。その最初が、地盤調査と地縄確認会、そして着工会だった。

地盤調査

基礎工事に入る前に、まず土地の性質を調べる必要がある。

1月20日、住友不動産の工事監督と、委託先である株式会社アーバン企画の担当者が現地で地盤調査を実施した。調査方法は、スクリューウエイト貫入試験(JIS A 1221)。ロッド(鋼棒)を地中に回転させながら貫入させ、地盤の硬さを測定する方法だ。調査時間は半日程度、立ち会いはしていない。

この地域の地盤については、契約前の初回訪問時に営業担当から説明を受けていた。

「この地域は、河川に近い低地を盛土によって宅地化した造成地盤です。盛土の部分は地盤が軟弱になりやすく、地盤改良――数メートルの鋼管を埋め込んで硬い地盤に到達させ、地盤を安定化させる施工――が必要になる可能性が高いです」

初回訪問の時点から地盤条件を把握し、概算見積にも地盤改良費用を含めて提案してくれる姿勢は、住友不動産を選んだ理由のひとつでもあった。

調査結果の詳細と、それに基づく地盤改良の仕様については、次章で書く。ここでは「地盤調査が無事に完了した」ことだけ記しておく。

1月22日、地縄確認会

建築本体の最初のイベントが、地縄確認会だった。

敷地に縄を張って、建物の配置や大きさを物理的に確認する儀式だ。図面上の寸法が実際の土地にどう反映されるかを、この時点で施主が最終確認する。地鎮祭を行う施主の場合は、その後に地縄確認会を行う流れになるが、当家は地鎮祭を行わない方針だったので、地縄確認会からのスタートになった。

確認する内容は主に3点。

  • 位置:設計図どおりの配置(セットバックなど)になっているか
  • 隣地境界:隣地との距離は十分か
  • 高低差:基礎の高さのイメージ(基礎がどれだけ土から出るか)

この日、前章(第30章)で書いた「境界杭が2か所見当たらない」問題もあわせて対応した。建築上の境界ポイントを新たに設定し、施工の基準として確定させた。

地縄を見たときの、奇妙な感覚

縄で囲まれた空間を見ると、家が小さく見えるらしい――これは事前に聞かされていた。

実際、土地の中央に小さく張られた縄を目にしたとき、その話を思い出す前に、まず違和感のほうが先に来た。

「こんなに小さくなってしまうのか」

想像していた家の大きさと、縄で示された実寸の印象が、まったく噛み合わない。一瞬、本当に設計通りなのかと疑いそうになった。

隣で営業担当が苦笑しながら言った。

「その印象は多くの施主様が感じるものです。ただ、実際に柱が立つと感覚は変わりますので、ご安心ください」

そういうものなのか、と思った。縄は線であって、面や立体ではない。頭ではわかっていても、目から入る情報はどうしても「小さい」と判断してしまう。

工事監督との初対面

地縄確認会で、建築フェーズの担当となる工事監督と初めて対面した。

第30章で地中埋設物の現地確認をしてくれた方だ。すみふトークでのやり取りは何度かあったが、顔を合わせるのはこの日が初めてだった。

30代前半と思われ、想像していたより若かった。真面目で落ち着いた印象で、マニュアルに沿ってきっちり確認を進めていくタイプ。積極的にグイグイ提案してくる営業担当とは対照的な性格で、このバランスは良さそうだ、と直感的に思った。

地縄確認会そのものは20分程度で終わった。短時間ながら、実質的な内容の濃い打ち合わせだった。

同日午後、着工会

地縄確認会のあと、住友不動産の事務所に移動して着工会を行った。

「着工会」という名前から、神事や施主の挨拶がある式典のようなものを想像していたが、違った。住友不動産では、施主の負担になるような儀礼的な要素は、施主からの要望がない限り行わない方針なのだそうだ。お酒や塩の儀式もなく、施主の挨拶もない。

では何をする場かというと、建築仕様の最終決定会議だった。

これまでに決めてきた建築仕様、間取り、IC、住宅設備など、すべての内容を網羅したA3書類が、数十ページの束になって目の前に置かれる。施主、営業担当、工事監督、事業部責任者の4名が揃って、1ページずつ確認していき、最後に施主が押印する、という流れだった。

工事監督が淡々と各ページの確認ポイントを説明し、私が最終確認して押印する。延々と繰り返す。

この場を逃したら、もう後戻りはできない。

見落としがないか、記憶と違う仕様になっていないか、細心の注意で一枚ずつ確認していった。書類を読み込む集中力と、印鑑を押す単純作業と、その両方の持続が必要で、終わる頃にはぐったりと疲れていた。

決定の集合体

後日、押印したすべての図面を袋綴じしたA4の分厚い冊子が送られてきた。

手に取ると、想像以上の重みがあった。この数ヶ月、一つひとつ判断してきた結果が、紙の束として物理的な形を取っている。

家が建つ前に、すでに「決定の集合体」としての家は完成している。そう気づいたとき、感慨深いものがあった。

次は、いよいよ物理的な建築が始まる。地盤調査報告書の受領と、地盤改良工事、そして基礎工事。ここから現場が動き出す。