光セラの外壁はこう作られる|印刷技術が生むコンクリートと石の質感

私が55歳で築60年の実家を建て替えた記録から、「外壁の質感はどう作られているか」の話をまとめる。

住友不動産で建てた当家の外壁は、ケイミューの光セラを2種類使っている。ベースがフィエルテ、アクセントがオーバルストーンだ。

完成した外壁(淡い灰色のベースと黒のアクセント)
当家の外壁。ベースにフィエルテ、アクセントにオーバルストーンを使った

選ぶときに何度も見返したのが、あるハウスメーカーがケイミューのサイディングの製造工程を研究した動画だった。コンクリートに見えるあの表情が、いくつもの工程を重ねて作られていると知って驚いた。

この記事の要点

  • 窯業系サイディングは4層構造で、意匠を作る層と耐候性を担う層が分かれている
  • コンクリート調の質感は、基材の肌理・印刷・艶の3つの重ね合わせで作られる
  • 石調は印刷を3層重ねる。接触式が届かない目地の底には、非接触の印刷で色を差す
  • 外壁材は40年品質だが、シーリングは30年。メンテナンスの時期が違う
  • 光触媒があるため、再塗装には制約がある

窯業系サイディングは4層でできている

窯業系サイディングは、次の4層で構成されている。

  1. 基材——形状と肌理を作る
  2. 着色層——色と柄を作る
  3. クリヤーコート(セラミックコート)——着色層を保護する
  4. オーバーコート(光触媒コート)——汚れを分解し、艶を決める

意匠を作るのは1と2で、耐候性を担うのは3、汚れを落とすのは4だ。

着色層には有機系が含まれるため、そのままでは紫外線で色あせる。それを防いでいるのはクリヤーコートである。主骨格の100%が無機樹脂で、無機系紫外線吸収剤とあわせて紫外線をカットしている。

厚さは平均5ミクロン。基材の肌理の触感を損なわない薄さだ。

光触媒とセルフクリーニングの仕組みは第23章に書いた。

フィエルテ——肌理を残したまま、絵を描く

ベースに使ったのは「QFフィエルテ チタン コンクリート」(品番 NH4971A)。16mm厚・455×3030mmのフラットパネルで、「FLAT DESIGN PANEL」というシリーズに属している注3

コンクリート打ち放しの表情を持っているが、柄は彫られていない。

サイディングの大判サンプル①「フィエルテ」
ショールームで見たフィエルテの大判サンプル

基材:押出成形で梨地を作る

押出成形とは、粘土状に練った材料を、口金(ダイス)から連続的に押し出して成形する方法だ。材料はパルプ繊維混入セメントけい酸カルシウム。

押し出された生地の表面に、金属ローラーを当てて凹凸を転写する。0.1mm前後の肌理がこの段階で作られる。

押出成形は深彫りの陰影もフラットな梨地も作れる工法で、フィエルテは後者にあたる。打ち放しの触感は、ここで生まれている。

着色層:セラジェット塗装

気泡の跡、セパ穴、色ムラ、骨材の透け、型枠の板目。コンクリートに見える要素はすべて、印刷された色の濃淡として再現されている。この層に凹凸はない。

セラジェット塗装は、インクジェット印刷の技術をケイミューが外壁材の塗装工程に応用したものだ。コンピュータ上のデザインデータに基づいて、赤・青・黄・黒の塗料を吹き付ける注1

なぜインクジェットなのか

従来のトッピング方式では、目地色を全面にスプレーし、凸部だけローラーで重ね塗りし、さらにスプレーで着色していた。3回の塗装を重ねる方式だ。

これは、凹凸が意匠の絵そのものであることを前提にしている。

ところがフィエルテの微細な凹凸は、絵ではなく肌理だ。ローラーで色を拾わせると、肌理が模様として浮き出てしまい、コンクリートに見えなくなる。

肌理を残したまま、それとは無関係な絵を独立して描く必要がある。非接触で印刷できるインクジェットだけが、これに応えられた。

艶で仕上げる

最上層の光触媒コートは、汚れの分解だけでなく艶も決めている。

印刷面が半艶以上だと、反射によって「印刷された平面」であることが露見してしまう。そこで全面を均一な艶消しにして反射を拡散させ、基材の肌理が作る陰影を前面に出している。

つまりコンクリート調の質感は、基材の肌理・印刷された色・艶の3つの階層の重ね合わせで成立している。

オーバルストーン——印刷を3層重ねる

アクセントに使ったのは「ネオロック・光セラ18 アルティエ オーバルストーン NH5704U QF オピリチタンブラック」。18mm厚で、3種の砂岩をランダムに配した大割柄だ。

4層構造はフィエルテと同じだが、着色層の中身が違う。フィエルテがセラジェット1つで完結しているのに対して、オーバルストーンは3つの工程を重ねている。

サイディングの大判サンプル②「オーバルストーン」
ショールームで見たオーバルストーンの大判サンプル

基材:形状を作る

石のピースの輪郭、大割の横目地、砂岩の粗い面。これらは金属ローラーによる成形で作られる。

材料の練りから押し出しまではフィエルテと同じで、異なるのはローラーの転写工程だ。フィエルテが凹凸を0.1mm単位で調整していたのに対して、オーバルストーンは深い彫りを刻む。この段階で石柄の目地や面の起伏が生まれる。色はまだ載っていない。

着色層(1):2色塗装で明暗を作る

まず目地色をイメージした色を全面にスプレーし、凸部だけをロールで重ね塗りする。ロールは凸部にしか当たらないため、彫りがそのまま色の境界になる。目地と石面を色で分離する工程だ。

着色層(2):グラオフプリント塗装で柄を作る

3種の砂岩の質感差、斑、粒状感。石の「柄」そのものを担うのがこの工程だ。

グラビア版で刷る。金属ロールの表面に「セル」と呼ばれる凹みを刻んだ版で、セルの大きさと深さを変えることで転写するインキ量を制御し、濃淡を表現する注2

一度ゴムのブランケットに移してから印刷するオフセット方式のため、ブランケットが変形して彫りに追従する。深彫りの製品でも版で刷れるのはこのためだ。

着色層(3):セラジェット塗装で目地に色を差す

ここで非接触の印刷が効いてくる。

ロールもブランケットも、彫り込んだ目地の底までは均一に届かない。接触式が届かない凹部に色を差せるのは、インクジェットだけだ。ケイミューは、自然な濃淡の色表現のために部分的に目地部へ色を入れていると説明している。

セラジェットは、フィエルテでは意匠のすべてを担い、オーバルストーンでは他の工程が届かない場所を補完している。同じ技術が製品によって違う役割を果たしている。

小さなサンプルでは分からない

この2つを選ぶとき、ショールームで大判サンプルを見た。

オーバルストーンは、小さなサンプルでは規則的なブロックの組み合わせに見えていた。実物は、さまざまな形状のブロックが組み合わさった独特の模様だった。

フィエルテは対照的だ。フラットでありながら、基材が持つ梨地のきめ細かい質感と、セラジェット塗装による品のある仕上がりがある。

工程を知ってから振り返ると、この差は当然だった。オーバルストーンは重層的な工程で作り上げたダイナミックな質感で、フィエルテは肌理と印刷の繊細な組み合わせだからだ。

小さく切り取ると、どちらもその特徴が失われる。

大判サンプルを見た話は第20章に書いた。

シーリングは高耐久「スーパーKMEWシール」

外壁材の話をしてきたが、外壁の維持に欠かすことができないものがシーリングだ。

シーリングは、外壁材と外壁材の継ぎ目(目地)を埋める緩衝材である。伸縮することで建物の動きを吸収し、防水と美観の維持も担っている。

フィエルテもオーバルストーンも、シーリングレス専用の形状ではない。縦の目地にはシーリングが必要になる。

当家に使われているのは「スーパーKMEWシール30」という高耐久・低汚染タイプだ。促進耐候性試験では、30年相当でもひび割れが生じないとされている。

一般的なシーリングは、およそ10年でひび割れ・汚れ・色あせが生じる。防水性が落ち、外観も損なわれるため、そのたびに打ち替えが必要になる。高耐久タイプを使っているかどうかで、この周期が大きく変わる。

年数の整理

ここは混同しやすいので整理しておく。

項目年数性格
外壁材の色品質40年性能表示
外壁材の再塗装周期40年ケイミューのライフサイクルコスト試算
シーリングの対応年数30年性能表示
保証色15年保証年数(シーリングとのセット使用が条件。単体では10年)

40年・30年は品質や対応年数の表示であり、保証年数は15年だ。ここを混同すると、判断を誤る。

外壁材は40年もつが、シーリングは30年で来る。メンテナンスの時期が違うということだ。

30年後にシーリング、40年後にサイディング

将来のメンテナンスは、2段階で来る。

30年後:シーリングの打ち替え

先に来るのがシーリングだ。スーパーKMEWシール30の対応年数は30年なので、そこで打ち替えを検討することになる。外壁材そのものはまだ寿命の途中だ。

40年後:サイディングの張り替え

外壁材は40年品質だが、その先には再塗装ではなく張り替えが待っている。

理由は光触媒にある。通常の塗料を重ね塗りすると、光触媒がそれを汚れと判断して分解してしまう。そのため再塗装には専用の下塗り材が必要になり、塗った時点で光触媒の機能は失われる。

セルフクリーニングを維持したまま塗り替えるという選択肢がないため、40年後は張り替えに寄ることになる。

私は40年後の年齢を考えると張り替えをすることはないと判断している。

その後も長く使い続ける場合は、30年後のシーリング打ち替えと40年後のサイディング張り替えを、初期のコスト判断に織り込んでおく必要がある。

選ぶときに聞くこと

外壁を選ぶときに確認しておくとよいことを挙げる。

  • 大判サンプルを見せてもらう。小さなサンプルでは、その製品の特徴が失われる
  • シーリングは何を使うか。耐久性が重要。外壁材とシーリングでは、メンテナンスの時期が違う
  • 保証年数と品質表示を分けて聞く。40年品質と保証15年は別の話だ
  • 将来の再塗装に制約があるか。光触媒がある製品は、塗り替えではなく張り替えになる

外壁の見た目は好みで選んでよい。維持費に関わるのは、外壁材とシーリングの2つの時期だ。

ここに挙げた項目は、各社に聞かなければ分からない。複数社の資料をまとめて集める方法は別の記事に書いた。

まとめ

  • 窯業系サイディングは4層構造。意匠を作るのは基材と着色層、耐候性を担うのはクリヤーコート、汚れを落とすのはオーバーコート
  • フィエルテのコンクリート調は、押出成形の肌理・インクジェット印刷・艶消しの重ね合わせ
  • オーバルストーンは印刷を3層重ね、接触式が届かない目地の底にはインクジェットで色を差す
  • 外壁材は40年品質、シーリングは30年、保証は色15年。年数の性格が違う
  • 30年後にシーリングの打ち替え、40年後にサイディングの張り替えが来る

脚注

注1 セラジェット塗装——インクジェット印刷は、ノズルから液体インクの微小な液滴を直接吹き付ける方式である。印刷面に接触しないため、凹凸のある面や厚みのある物にも印刷できる。ケイミューはこれを外壁材の塗装工程に応用し、赤・青・黄・黒の4色で外壁材に印刷している。

注2 グラオフプリント塗装——「グラビア・オフセット・プリント」の略と考えられる(ケイミューは正式な語の展開を公表していない)。グラビア(凹版)は金属の版に微細な凹みを作り、そこに塗料を流し込む方式で、写真のような細かい濃淡やグラデーションの表現に優れる。オフセットは版から直接ではなく、一度ゴム製のローラーに塗料を移してから対象物に転写する間接方式である。表面に凹凸のある硬い素材にも、ゴムの弾力を利用して均一に模様を移せる。

注3 FLAT DESIGN PANEL——フィエルテは、グラフィル・シンプルドットとともにこのシリーズを構成している。源流は内装材のSOLIDOで、木や石や鉄を使った壁材があるように、セメント本来の質感を生かした壁材があってもよいのではないか——という建築家の声から生まれたという。このラインはもともと、ハウスメーカーの標準仕様として量を捌く商品ではなく、設計事務所を経由して指名される商品として設計されている。住友不動産が注文住宅の標準仕様でこれを選べるようにしているのは、高級マンション施工の実績によるものと考えられる。

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