第25章 解体業者選定

解体工事は、自分で業者を手配することに決めていた。

ハウスメーカーに一括で委託すれば品質面や進行管理面では安心だが、費用が相当割高になるという話をあちこちで聞いていた。中間マージンが乗るからだ。

住友不動産からも解体を含めた見積もりは出ていたが、ここを切り離して自分で発注すれば、数十万円単位で費用を下げられる可能性がある。住友不動産には、自分で解体業者を手配する方針を事前に伝え、了承を得ていた。

ハウスメーカー選定前、7月下旬の段階で、すでに解体業者への見積もり取得を始めていた。プロジェクト全体の費用感を掴むためだ。建て替えの総額は、本体工事費だけで決まるものではない。

解体、外構、登記、仮住まい、引っ越し、家具家電。すべてを合計してはじめて本当の予算がわかる。

解体業者選びの難しさ

とはいえ、解体業者選びは怖い世界でもある。

調べれば調べるほど、トラブル事例が出てくる。業者選びを失敗すると、想定外の追加工事費、近隣からのクレーム、場合によっては訴訟にまで発展することもある。悪徳業者にあたって、本来不要な費用を請求されたという話も珍しくない。

しかも、優良な解体業者を自分で見つけるのは、かなり大変だ。

ネット検索で上位に出てくる業者が優良とは限らない。むしろ、本当に仕事のできる業者は紹介中心で回っていて、ネットに広告を出していないことも多いらしい。信頼できる業者かどうかを判断するには、解体工事業登録の有無、廃棄物処理のマニフェスト対応、近隣対応の姿勢など、専門的な目線が必要になる。

素人が一から業者を探すのは、無謀に近い。

「解体無料見積ガイド」を利用

行き着いたのが、「あんしん解体業者認定協会」が運営する「解体無料見積ガイド」というサービスだった。

ここは、審査を通過した優良業者だけを登録しており、施主と業者をマッチングしてくれる仕組みになっている。利用料は無料。自分で一社ずつ探す必要がなく、いきなり複数の優良業者から相見積もりが取れる。

なぜ「解体無料見積ガイド」だったのか

数多い解体業者の中から、相見積もりを頼む候補先を選ぶ手段がない。悪徳業者も多いと聞けば、なおさら心配になる。

「解体」「見積」「比較」でネット検索して行き着いたのが、このサービスだった。

運営する一般社団法人あんしん解体業者認定協会は、解体業界の透明化を目指し、施主と優良な解体業者が適切に出会えるよう活動している。全国の解体業者を裏側まで審査し、品質面・価格面ともに優良な業者を認定する。相談窓口も設けている(協会ホームページより)。

決め手は、解体業者の訪問調査まで行って、悪徳な業者を排除している点だった。さらに、出てきた見積書は「解体無料見積ガイド」側もチェックしてくれる。

他の一括見積もりサイトでは、業者の選別をせずいい加減な業者を紹介したり、問い合わせた途端に複数の業者から電話が殺到したりするところも多いという。ここはそうではなかった。

解体工事でよくある追加費用とトラブル事例のページ
「解体無料見積ガイド」でもらったパンフレット。トラブル事例や追加費用の相場まで具体的に書かれている

連絡を入れると、地元に近い優良業者3社を候補として選定してくれた。そして、私が在宅できる平日に合わせて、3社の訪問見積もりをまとめて設定してくれた。

いずれも木造家屋の解体実績が豊富で、対応も良心的な会社だった。訪問見積もりでは、現場を実際に見てもらい、搬出経路や近隣配慮の方法、工期などを細かく確認してもらう。

3社の見積もりと、住友不動産との比較

3社から出てきた見積もりは、150万円前後で均衡していた。当家は狭小住宅で、建物面積も大きくはない。それを差し引いても、妥当な価格帯だという印象を持った。

3社の見積書を、項目ごとに並べた

総額だけを見ても意味がない。3社の見積書を項目ごとに並べて比較した。

  • 足場養生、生木撤去処分、重機回送費用:3社ほぼ同等
  • 解体工事費:MUSUBIが最も安い(他2社の9割程度)
  • 木製家具の撤去:3社とも解体費用に含む
  • エアコン撤去処分:C社のみ有償
  • アスベスト調査費用:B社のみ有償
  • 残置物処分、地中埋設物処分:3社とも別途見積もり

並べてみると、業者ごとに「何を含み、何を別料金にするか」が違うことが分かる。総額が安く見えても、あとで有償になる項目が多ければ意味がない。

そして重要な発見があった。MUSUBIの見積書には、他の2社が記載していない項目まで書かれていた——敷石の撤去処分、水栓設備、諸経費(燃料費を含む)。それでいて、総額が最も安かった。

安い見積もりには2種類ある。項目を書かずに安く見せている見積もりと、項目を全部書いたうえで安い見積もりだ。MUSUBIは後者だった。この差は、見積書を並べてはじめて見える。

一方、住友不動産の解体見積もりは、これを明確に上回るものだった。自分で手配すれば、差額は数十万円単位になる。

直接発注すればある程度は割安になると想定していたが、差額を見てむしろ安心した。自分で手配する方針で間違いない、と確信できた。

この差額は、ハウスメーカーの品質管理や進行管理の「安心料」として支払う価値があるかどうか、という判断になる。自分の場合は、3社とも「解体無料見積ガイド」の審査を通過した優良業者であり、品質面の不安はほぼない。

進行管理も、住友不動産との間に入って調整する必要はあるが、工程は明確だ。費用を少しでも安く抑えることを選んだ。

決め手になった3つのこと

3社の中から、株式会社MUSUBIに発注することに決めた。決め手は3つ。

ひとつは価格。3社の中で最も安かった。とはいえ突出して安いわけではなく、均衡の中で最も安いという位置づけで、安すぎて不安になるような価格ではない。

ふたつめは、来訪した社長の人柄。体格の良い、朗らかな方で、職人特有の厳しさと温厚さを併せ持っていた。現場を任せても安心して大丈夫だと直感的に思えた。

解体工事は、結局は人がやる仕事だ。経営者の人柄は、現場の雰囲気や近隣対応にも直結する。

みっつめは、地中埋設物への対応の仕方だった。

当家の土地は、近隣の工事の話を聞くと、地中に埋設物がある可能性が高かった。このことをMUSUBIの社長に伝えると、丁寧に対応方法を説明してくれた。コンクリート等の埋設物が発見された場合は撤去が必要で別料金になるが、発見した時点ですぐ見積もりを提出する、と。

そして、こう付け加えてくれた。

「この件を事前に業者に伝えると、悪徳な業者の場合、外から持ち込んだ埋設物を混ぜて撤去費用を水増しするところもあります。注意したほうがいいですよ」

この一言で、信頼できる業者だと確信した。自分の仕事を増やすチャンスを差し出されたときに、むしろ施主を守る助言をしてくれる。こういう姿勢は、誠実でなければ出てこない。

実際に解体で地中埋設物が出たときの顛末は、解体後に地中埋設物が出た実例に書いた。

契約前に確認したこと

発注を決めてから、工事請負契約書を取り交わした。確認したのは次の点だ。

  • 支払い条件:現金100%。工事着手前に50%、完工後に残金
  • 近隣挨拶:MUSUBIが実施
  • 工期:建築許可が下りてからの正式発注を前提に、12月1日着工を予定

工期については事情があった。建築許可申請が必要なため、正式発注は許可が下りてからになる。その前提で12月1日の解体着工を予定してほしいと伝えたところ、柔軟に対応してくれると言ってくれた。この一言も、安心して任せられる材料になった。

選ばなかった2社への断り

相見積もりで気が重いのが、選ばなかった業者への断りだ。

これは「解体無料見積ガイド」が代行してくれた。自分で電話を入れる必要はない。相見積もりを取るハードルが下がるのは、こうした部分でもある。

発注までの流れ

9月中旬、住友不動産との間で着工スケジュールを仮決めしたタイミングで、MUSUBIへの解体発注を住友不動産に打診した。了解を得て、9月18日、MUSUBIに正式に発注を決め、あんしん解体業者認定協会にも連絡を入れた。

9月28日、MUSUBIが来訪して具体的な打ち合わせ。12月1日解体着工、という予定で合意した。

これで、解体工事の手配は完了。次は仮住まい先の選定に移る。

解体費用の詳細と、自己手配の流れ全体は、解体工事を自己手配した実例(費用の詳細から滅失登記まで)にまとめている。


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