第31章 滅失登記

解体工事が終わると、次は登記の手続きに入る。

建物を壊したら、その事実を法務局に届け出て、登記簿上からも「建物があったこと」を消す必要がある。これを「建物滅失登記」という。

なぜ滅失登記が必要か

この手続きの存在を、契約前の私は知らなかった。

教えてくれたのは住友不動産の営業担当だった。解体した建物の滅失登記を済ませないと、新たな建物の建築ができず、新築した建物の登記もできない。そして、新築の登記ができなければ住宅ローンも組めない。つまり、建て替えというプロジェクトを完結させるために、滅失登記は(一見地味だが)避けて通れない工程だった。

もうひとつ、土地の登記についても同じ時期に問題が発覚した。

当家の土地の地目(登記簿上の用途区分)が「雑種地」になっていたのだ。建物が建っていた以上、本来は「宅地」になっているはずだが、何らかの事情で変更されないままになっていたらしい。過去の相続や登記の際に変更し忘れたのだろうが、正確な経緯はわからない。

この状態のままでは、滅失登記と同様に、新たな建物の建築・登記・住宅ローンに支障が出る。地目を「雑種地」から「宅地」に変更する「地目変更登記」も、あわせて進める必要があった。

これも事前に調査してくれていた営業担当からの助言で把握できた。こういう実務的な落とし穴に先回りして注意喚起してくれる点は、ハウスメーカー選びでの評価につながる部分だと改めて思う。

自分で申請することにした

滅失登記も地目変更登記も、土地家屋調査士や司法書士に依頼することができる。

しかしネットで調べてみると、手続き自体はそれほど難しくなく、自分でも十分にできそうだった。費用削減のため、自分で申請することに決めた。

結果として、この判断は正しかった。手続きはシンプルで、仕事の合間に進められる程度の負荷しかかからなかった。

滅失登記の手続き

解体業者のMUSUBIから、1月23日に「建物滅失証明書」を受領した。これが滅失登記申請の中心的な添付書類になる。

ここで気になったのは、解体業者側の法人情報をどう証明するかだった。過去の情報だと、解体業者の「会社の代表者資格証明情報(登記事項証明書)」や「会社の印鑑証明書」が必要とされていた。これらを取り寄せるとなると、解体業者にも負担がかかるし、自分の手間も増える。

調べてみると、これは現在では不要になっていることがわかった。平成27年11月の不動産登記規則改正により、法人が申請書または取壊証明書に「会社法人等番号(12桁)」を記載すれば、代表者資格証明情報や印鑑証明書の添付が省略可能になっている。登記官が法務局内部のシステムで会社情報を確認できるようになったためだ。

つまり、MUSUBIから受領した「建物滅失証明書」に会社法人等番号が記載されていれば、それだけで追加の添付書類は不要になる。実際にMUSUBIからの証明書にはこの番号が記載されていた。

申請書類自体は、法務局のウェブサイトからダウンロードした様式を使って自作した。記入内容は、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積、そして滅失の原因と日付。登記簿謄本を見ながら正確に写していけば、特別な知識は不要だった。

1月31日、書類一式を法務局(東京法務局府中支局)に郵送した。

法務局からは完了の連絡が来るわけではない。2週間ほど経った頃合いを見て、こちらから電話して確認した。2月15日、完了したことを確認できた。登録免許税はゼロ円。かかった費用は郵送料だけだった。

地目変更登記

滅失登記が完了した後、続けて地目変更登記の手続きに入った。

こちらは「雑種地」から「宅地」への変更。建物の基礎工事が進み、建物が物理的に建つことが明らかになった段階で、「宅地」として地目変更を申請するのが一般的な流れだ。実際、当家の場合も基礎工事が完了に近づいた2月29日を地目変更日とし、3月8日に申請を行った。

地目変更登記も、滅失登記と同様、自分で申請した。必要書類は登記申請書のみで、現地調査はすでに住友不動産側が実施した資料があったので、それを活用した。

申請から完了までは10日ほど。3月18日に地目変更登記が完了した。こちらも登録免許税はゼロ円。郵送料のみの実質無料だった。

自分で登記するという選択肢

滅失登記と地目変更登記を自分で行って、感じたことがある。

どちらも手続き自体は平易だった。必要書類を揃えて、申請書を書いて、郵送する。これだけだ。土地家屋調査士や司法書士に依頼すれば、1件あたり数万円の費用がかかる。自分でやれば、その費用を丸ごと節約できる。

もちろん、手続きに不安がある人、時間に余裕がない人、複雑な権利関係がある土地の場合は、専門家に依頼するメリットもある。依頼費用は「安心料」として妥当な部分がある。

ただ、建て替えを検討している人には、「自分でもできる可能性がある」ということは知っておいて損はない。ネットで調べれば、具体的な申請書の書き方や添付書類の情報は豊富に出てくる。一度やってみて難しそうなら専門家に切り替える、という判断でも遅くはない。

建て替えプロジェクトは、大小さまざまな判断の連続でできている。小さな費用削減も、積み上げれば馬鹿にならない金額になる。

次は、着工

滅失登記の完了は2月15日。地目変更登記は3月18日。

実際にはこれらの登記手続きが並行して進んでいる間に、建築工程も動き出していた。1月22日には地縄確認会・着工会が行われ、2月3日には杭工事、2月5日には基礎工事が着工している。

登記の事務作業を進めながら、現地では新しい家の建築が始まっていた。プロジェクトは、ついに「建てるフェーズ」に入っていく。