建て替え

工事・実務

第33章 地盤改良と仮囲い

地縄確認会と着工会を終え、仕様が完全に確定した。次は、物理的な建築の開始だ。まず動くのは地盤の補強――地盤改良工事。そして、工事期間中の近隣配慮と安全確保のための仮囲い設置。建物の骨格が立ち上がる前の、「家を支える下地を整える」段階である。1月23日、地盤調査報告書の受領1月23日、前章で触れた地盤調査(1月20日実施)の報告書を受領した。結果は、想定していたより地盤は緩くはないが、やはり改良は必要、というものだった。報告書の所見によると、沖積面の厚い盛土地盤では、盛土の収縮変形や盛土荷重による旧地盤の圧密が長期にわたって進行する可能性がある。そのためスラブの強化や地盤補強を含めて、安全側の対応が望ましい、とのこと。最終的な仕様は、4メートル×13本、7.3メートル×5本の鋼管を地盤に打ち込んで補強する、という形に決まった。費用は約100万円。想定より10万円安く済んだ。鋼管の本数が増えると費用が跳ね上がると聞いていたので、結果が出るまでは正直ヒヤヒヤしていた。地盤は開けてみないとわからない部分が大きい領域だけに、見積の範囲内に収まったことは大きな安心材料だった。地盤改良の工法について...
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第32章 地縄確認会・着工会

建て替えプロジェクトは、ついに「建てるフェーズ」に入る。1月下旬、連続する工程を1週間刻みで消化していくことになった。その最初が、地盤調査と地縄確認会、そして着工会だった。地盤調査基礎工事に入る前に、まず土地の性質を調べる必要がある。1月20日、住友不動産の工事監督と、委託先である株式会社アーバン企画の担当者が現地で地盤調査を実施した。調査方法は、スクリューウエイト貫入試験(JIS A 1221)。ロッド(鋼棒)を地中に回転させながら貫入させ、地盤の硬さを測定する方法だ。調査時間は半日程度、立ち会いはしていない。この地域の地盤については、契約前の初回訪問時に営業担当から説明を受けていた。「この地域は、河川に近い低地を盛土によって宅地化した造成地盤です。盛土の部分は地盤が軟弱になりやすく、地盤改良――数メートルの鋼管を埋め込んで硬い地盤に到達させ、地盤を安定化させる施工――が必要になる可能性が高いです」初回訪問の時点から地盤条件を把握し、概算見積にも地盤改良費用を含めて提案してくれる姿勢は、住友不動産を選んだ理由のひとつでもあった。調査結果の詳細と、それに基づく地盤改良の仕様については、...
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第31章 滅失登記

解体工事が終わると、次は登記の手続きに入る。建物を壊したら、その事実を法務局に届け出て、登記簿上からも「建物があったこと」を消す必要がある。これを「建物滅失登記」という。なぜ滅失登記が必要かこの手続きの存在を、契約前の私は知らなかった。教えてくれたのは住友不動産の営業担当だった。解体した建物の滅失登記を済ませないと、新たな建物の建築ができず、新築した建物の登記もできない。そして、新築の登記ができなければ住宅ローンも組めない。つまり、建て替えというプロジェクトを完結させるために、滅失登記は(一見地味だが)避けて通れない工程だった。もうひとつ、土地の登記についても同じ時期に問題が発覚した。当家の土地の地目(登記簿上の用途区分)が「雑種地」になっていたのだ。建物が建っていた以上、本来は「宅地」になっているはずだが、何らかの事情で変更されないままになっていたらしい。過去の相続や登記の際に変更し忘れたのだろうが、正確な経緯はわからない。この状態のままでは、滅失登記と同様に、新たな建物の建築・登記・住宅ローンに支障が出る。地目を「雑種地」から「宅地」に変更する「地目変更登記」も、あわせて進める必要...
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第30章 解体〜地中埋設物

年が明けて、1月5日、解体工事が始まった。築60年の実家が、この日から5日間かけて消えていく。60年の歴史が消えることへの感慨は、不思議なほど湧かなかった。むしろ、長年使い倒してボロボロになってしまった住処を、ようやく取り壊してもらえるという清々しさのほうが強かった。私にとってこの日は、ひとつの終わりというより、新しい家への第一歩だった。足場設置から解体着工まで解体の準備作業は、年末のうちに済んでいた。12月28日に足場が設置され、電気設備の撤去も完了していた。そこから年を越して1月5日の解体着工まで約1週間の間隔がある。これは単純に、お互いに正月休みをはさんだためだ。ちなみに「年末までに足場を設置し、解体作業自体は年明けから」という段取りには、近隣への配慮の意味もあった。解体工事が年を跨ぐと、解体途中の半壊状態で正月を迎えることになり、見た目としても近隣に良い印象を持たれない。12月末で準備を終え、1月の仕事始めと同時に解体に入る、という段取りはこの配慮を踏まえたものだった。近隣への挨拶回りは、解体業者のMUSUBIが事前に行ってくれていた。解体工事は音も埃も出るので、近隣トラブルに...
工事・実務

第29章 建築許可申請の遅延

10月中旬、夜。携帯が鳴った。住友不動産の営業担当からだった。用件はひとつ。建築許可申請が難航している、というものだった。市の審査に出した書類に対して、何度も大幅な書き直しを求められている。設計の一部にも修正要求が出ている。営業担当の見立てでは、住友不動産の設計は建築基準に合致しており、市の要求は市独自の見解に基づくものとのことだった。11月に予定されていた建築審査会には、このままでは間に合わない。おそらく12月以降にずれ込む――そういう電話だった。受け止められなかった電話を切ってから、しばらく動けなかった。10月中旬という時期は、プロジェクト全体のなかで一番気分が高揚していた頃だった。ハウスメーカーを住友不動産に決め、仕様がほぼ固まり、仮住まい先の申込みも終え、解体業者も決まっていた。すべてが計画通りに進んでいる手応えがあった。そこに降ってきた、この報せ。引き渡しは5月1日の予定だ。そこに間に合うのか。間に合わないとしたら、どれくらいずれ込むのか。仮住まいの家賃は契約期間を延ばす必要があるのか。解体業者MUSUBIのスケジュールはどう組み直すのか。頭の中で、ぐるぐると不安が回った。正...
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引っ越し

12月17日、引っ越し当日。朝9時、アーク引越センターの作業員4人が実家に到着した。ここから、半年間の仮住まい生活が始まる。当日の流れ作業は午前中の搬出から始まった。4人体制で手際よく荷物がトラックに積み込まれていく。そして、この日は搬出先が2つに分かれるのが特殊だった。半年間保管する荷物を積むトラックと、仮住まい先へそのまま運び込む荷物を積むトラック。それぞれが現場に待機していて、仕分けシールに従って積み分けていく。仮住まい先のライフラインは事前に開通済み。電気もガスも水道も、着いたその日から普通に使える状態にしてあった。洗濯機の搬出・搬入・設置は、アーク委託の専門業者が対応。テレビとケーブルテレビ配線は、別途JCOMに依頼していて、こちらも同じ時間帯に作業が入った。業者が入り組んでいて、それぞれから指示を求められる。「これはどちらに積みますか」「コンセントはどこに繋ぎますか」「チューナーの設置位置はここでよろしいですか」。午前中は実家で搬出を見守り、午後は仮住まい先に移動して搬入と設置の指示を出し続けた。全作業が完了したのは15時頃。プロの仕事に驚く作業を見ていて、何度も驚かされた...
工事・実務

引っ越し準備

仮住まいの契約が済んだ時点で、本格的に引っ越し準備が始まった。築60年の実家には、60年分の荷物がある。祖父母が暮らし、親が暮らし、自分が育ってきた家だ。タンスの奥からは昭和の切手が出てくるし、押入れからは祖母の着物が出てくる。新しい家は、敷地の条件から今よりかなり狭くなる。ということは、今の荷物を全部は持っていけない。むしろ、この機会に思い切って減らすべきだった。判断基準は「極力捨てる、処分する」。引っ越し業者の選定まず動かしたのは、引っ越し業者の選定だった。今回の引っ越しは、普通の引っ越しとは条件が違う。仮住まい先には必要最小限のものだけ運び、残りの荷物は業者の保管サービスに預ける。そして半年後、新居が完成したら、仮住まい先の荷物と保管荷物を新居に運び込む。つまり「2段階輸送+半年間の保管」という特殊な形になる。これに対応でき、かつ価格が妥当な業者を探す必要があった。ネットで検索し、評価の高かった「アーク引越センター」に見積もりを依頼。あわせて、住友不動産からの紹介2社、日本テンポラリーハウスからの紹介1社の計4社から相見積もりを取った。比較したのは「保管料+往復引っ越し代金」の合...
工事・実務

仮住まい先選定

解体業者の選定と並行して、仮住まい先の選定も動いていた。半年近く、慣れない場所で暮らすことになる。どこに、どんな家を借りるか。ここで快適さが下がると、建て替え期間中ずっとストレスを抱えることになる。とはいえ、選びすぎて決まらないのも困る。12月解体予定なので、11月中には入居している必要があった。日本テンポラリーハウス仮住まいは、住友不動産の紹介で「日本テンポラリーハウス」という会社に相談することにした。ここは、建て替えやリフォーム期間中の仮住まい専門の紹介会社だ。普通の賃貸仲介と違って、短期契約が前提。建て替えの工程に合わせて入居・退去日を調整してくれる。敷金礼金の扱いも、通常の賃貸より柔軟なことが多い。9月25日、電話で相談を入れた。こちらの住所は住友不動産から連携されていて、担当者はすでに周辺エリアの物件情報を把握していた。その日のうちに、候補物件の資料がメールで届いた。仕事が速い。10月1日、渋谷のカフェで担当者と打ち合わせ。30代くらいと思われる女性の担当者で、経験豊富な積極的な応対だった。内見から申込み、入居までの流れを一通り説明してもらう。良い物件は早く埋まるので、早めに...
工事・実務

解体業者選定

解体工事は、自分で業者を手配することに決めていた。ハウスメーカーに一括で委託すれば品質面や進行管理面では安心だが、費用が相当割高になるという話をあちこちで聞いていた。中間マージンが乗るからだ。住友不動産からも解体を含めた見積もりは出ていたが、ここを切り離して自分で発注すれば、数十万円単位で費用を下げられる可能性がある。住友不動産には、自分で解体業者を手配する方針を事前に伝え、了承を得ていた。ハウスメーカー選定前、7月下旬の段階で、すでに解体業者への見積もり取得を始めていた。プロジェクト全体の費用感を掴むためだ。建て替えの総額は、本体工事費だけで決まるものではない。解体、外構、登記、仮住まい、引っ越し、家具家電。すべてを合計してはじめて本当の予算がわかる。解体業者選びの難しさとはいえ、解体業者選びは怖い世界でもある。調べれば調べるほど、トラブル事例が出てくる。業者選びを失敗すると、想定外の追加工事費、近隣からのクレーム、場合によっては訴訟にまで発展することもある。悪徳業者にあたって、本来不要な費用を請求されたという話も珍しくない。しかも、優良な解体業者を自分で見つけるのは、かなり大変だ。...
設計・契約

着工スケジュールを組む

仕様決定は順調に進んでいた。8月に契約を結び、9月に入ってからは間取りの詳細を詰め、ICとの打ち合わせも始まっていた。この調子なら11月中旬には仕様が確定するだろう、という見通しが立ってきた。仕様が固まれば、次は工程だ。9月中旬、営業担当との打ち合わせで、着工スケジュールの策定に入った。こちらの希望はひとつ、「契約から最短日程で」。とにかく早く新しい家での生活に移りたかった。築60年の実家で長年見てきた不具合を、一日でも早く過去のものにしたい。その一心だった。建築許可申請という前段当家の居住地域は少し複雑な事情があり、通常の建築確認申請の前に「建築許可申請」という手続きが必要だった。建築許可が下りてはじめて、建築確認申請に進める。解体工事も、許可が下りてからでないと着手できない。この事情は地域限定の話なので、これから建て替えを検討する多くの人には関係がない。ただ、自分の土地がどういう地域指定を受けているか、事前に確認しておいたほうがいい、という学びはあった。都市計画や景観条例の関係で、通常の手続き以外のステップが必要になる土地は、意外と多い。ありがたかったのは、住友不動産の営業担当がこ...