第1章 築60年の家で起きていたこと

床が鳴るたびに、少しだけ気になっていた。

築60年。母と同居してきた木造の実家は、長い間、大きな手を入れていなかった。水回りの交換も、外壁の塗装も、「そのうち」と言い続けて、気づけばここまで来てしまった。

床のきしみ、窓のすきま風、建具のゆがみ、水回りの小さな水漏れ。どれも今すぐ困るわけではない。でも「このままでいい」とも思えなかった。

決定的だったのは、地震の話を聞いたときだ。

この土地の地盤はもろい、と以前から聞いていた。ニュースで大きな震災の映像が流れるたびに、同じ問いが頭に浮かぶ。

この家は、あと何年住めるのだろうか。

修理をせずにここまで来た後ろめたさも、その不安を大きくしていた。今すぐどうにかなるわけじゃない。でも、「いつか」は確実にやってくる。

そう気づいたとき、私は初めてきちんと考えることにした。リフォームなのか、リノベーションなのか、それとも建て替えなのか。そして、誰に相談すればいいのか。

55歳からの家との向き合い方が、ここから始まった。


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