耐震

建て替え判断

第6章 工務店かハウスメーカーか

建て替えを前提に進めることに決めたあと、次に考えたのはどの住宅会社に依頼するかだった。LIFULL HOME'SのKさんと一緒に、工務店とハウスメーカーの違いを整理した。工務店とハウスメーカーの違い工務店は地域に根ざした建築会社だ。設計の自由度が高く、細かな要望に対応しやすい。コストを抑えられる場合もある。ただし品質や施工体制は会社によってばらつきがあり、保証・アフター体制も異なる。ハウスメーカーは全国規模で住宅を供給する企業だ。工法や部材が規格化されており、品質が安定している。保証やアフターサービスも整っている。その分、価格は高くなりやすく、仕様に制約がある。建て替え特有の条件建て替えでは解体費・仮住まい・地盤改良といった追加費用が発生する。私の土地のように敷地が狭く建蔽率・容積率の制約が厳しいケースでは、工務店の柔軟さが有利に働く場面もある。私がハウスメーカーを選んだ理由それでも私はハウスメーカーを選んだ。決め手は一つだ。東日本大震災や熊本地震で、実際に倒壊しなかった実績がある。カタログに載っている耐震等級の数値より、この事実の方が判断材料として明確だった。私が最も重視していたのは...
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第4章 私が建て替えを選んだ理由

3章のKさんの説明を聞き終えたとき、私の中では結論が出ていた。建て替えるしかない。理由はシンプルだった。私が一番恐れていたのは、いつかこの家に住めなくなることだ。大きな地震で家が倒壊する——そのイメージが、ずっと頭の片隅にあった。リフォームやリノベーションでも、設備を更新し内装を整えれば住みやすくなる。費用だけを見れば、建て替えより大幅に抑えられる。しかし構造躯体は変わらない。基礎、柱、梁——家の骨組みそのものは、リフォームでは作り直せない。「長く安心して住める家にしたい」それが私のプロジェクトの本質だと、この相談で初めてはっきり言語化できた。その目的を達成する方法は、建て替え一択だった。建て替えとなると大規模なプロジェクトになる。費用も格段に増す。しかし安心して住める家にするためには、必須な工事だ。親から受け継いだこの家を、自分の手で新しく丈夫な家に生まれ変わらせる。Kさんとの相談の最中、55歳でこの大きなプロジェクトを始動する決意を持った。次に考えるべきことは、どの会社に建ててもらうか、費用はどれくらいになるか——家づくりの具体的な条件だった。← 前の章:第3章 地震に耐えられる家...
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第3章 地震に耐えられる家にするための条件

LIFULL HOME'Sのオンライン相談で、私は担当のKさんにこう伝えた。「費用をできるだけ抑えながら、耐震対策をしたい」と。Kさんが最初に聞いたのは、「建てられたのはいつ頃ですか?」という一言だった。築60年。1960年代の木造住宅です、と答えると、Kさんは日本の耐震基準の話を始めた。1981年、日本の耐震基準は大きく改正されている。それ以前の住宅は「旧耐震」と呼ばれ、「震度5程度で倒壊しない」という前提で設計されている。現在の基準(新耐震)は「震度6〜7でも倒壊しない」。私の実家は、今の基準では安全とは言えない建物だった。「重要なのは設備ではなく、構造です」Kさんはそう言った。古い家と聞くとキッチンや浴室、外壁の傷みを思い浮かべる。私もそうだった。しかしKさんの説明はそこではなかった。住宅は設備・内装・構造で成り立っている。設備や内装はリフォームで交換できる。だが構造躯体——基礎、柱、梁という家の骨組みは、簡単には変えられない。リフォームでできることには限界がある。設備は新しくなる。内装もきれいになる。ある程度の安全性も向上する。しかし家の骨組みそのものを、現在の耐震基準に作り直...
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第1章 築60年の家で起きていたこと

床が鳴るたびに、少しだけ気になっていた。築60年。母と同居してきた木造の実家は、長い間、大きな手を入れていなかった。水回りの交換も、外壁の塗装も、「そのうち」と言い続けて、気づけばここまで来てしまった。床のきしみ、窓のすきま風、建具のゆがみ、水回りの小さな水漏れ。どれも今すぐ困るわけではない。でも「このままでいい」とも思えなかった。決定的だったのは、地震の話を聞いたときだ。この土地の地盤はもろい、と以前から聞いていた。ニュースで大きな震災の映像が流れるたびに、同じ問いが頭に浮かぶ。この家は、あと何年住めるのだろうか。修理をせずにここまで来た後ろめたさも、その不安を大きくしていた。今すぐどうにかなるわけじゃない。でも、「いつか」は確実にやってくる。そう気づいたとき、私は初めてきちんと考えることにした。リフォームなのか、リノベーションなのか、それとも建て替えなのか。そして、誰に相談すればいいのか。55歳からの家との向き合い方が、ここから始まった。次の章:第2章 どこに相談するべきか考えた →