実家に住み続けることに、はっきりした不満があったわけではありません。
雨漏りがしているわけでもなく、生活に支障が出ているわけでもない。
ただ、ある時から、「このままで本当に大丈夫なのだろうか」という違和感が、静かに残るようになりました。
私の実家は、築60年になります。
両親が建てた家で、私自身も長い時間をここで過ごしてきました。
思い出も多く、住み慣れているからこそ、
多少の不便や古さには、目をつぶってきた部分もあります。
実際、長年住んできた家というのは、
「まだ住めている」という事実そのものが、安心材料になりがちです。
これまで大きな問題がなかったのだから、
これからもきっと大丈夫だろう。
私自身も、そう考えていました。
ですが、年齢を重ねるにつれて、
その「大丈夫」が、少しずつ揺らぎ始めます。
きっかけは、大きな出来事だったわけではありません。
床のきしみや、冬の底冷え、
少しずつ増えてきた細かな不具合。
それらが積み重なる中で、
「この家は、あと何年、安心して住めるのだろうか」
という疑問が、頭から離れなくなりました。
冷静に考えると、この家が建てられたのは、
現在の耐震基準ができる前です。
つまり、今の基準で見れば、十分とは言えない前提を抱えた家だということになります。
もちろん、
「古い家=すぐに危険」というわけではありません。
ただ、安全かどうかを、感覚だけで判断してよいのか
という点には、疑問が残りました。
ここで初めて、私は
「あと何年住めるか」ではなく、
「この先、どういう暮らしをしたいのか」
という視点で、この家を考える必要があると感じました。
今まで通り住み続けることが、
本当に自分にとって安心なのか。
それとも、どこかで一度、
きちんと向き合うタイミングが来ているのか。
この時点では、
リフォームにするのか、建て替えるのか、
答えはまったく出ていません。
ただ、「考えないままにしておくこと」は、
もうできない段階に来ている。
そのことだけは、はっきりしていました。
こうして私は、
築60年の実家と、
初めて真正面から向き合うことになります。
ここから先は、
迷いながら、比べながら、
少しずつ考えを整理していく過程の記録です。
まずは、リフォーム・リノベーション・建て替えという選択肢を、結論を出さずにどう整理して考え始めたのかから書いていきます。